前回は、二人の即興演奏家と二人の踊り手の十シーンからなるコラボ法をご紹介しましたが、今回はそれを更に深めます。
実例を挙げます。
まず、三シーン構成の作品で説明します。一つのシーンはそれぞれ七分とします。
ここに、AとBという二人の音楽家と、○と□という二人の踊り手がいます。 |
第一シーン |
・・・ |
Aと○でコラボ。 |
第二シーン |
・・・ |
Bと□でコラボ。 |
第三シーン |
・・・ |
Aと□、Bと○、それぞれのコラボを同じ舞台で同時に行う。 |
第一シーン。Aと○は、絵の具の塗っていない白いキャンバスに向かうような、不安と期待の入り交じった緊張した気持ちでしょう。両者のからだもまだ解れていない。これは観客も同じでしょう。Aと○のテンションのパラメーターはまだ調整しきれていない。しかし、時間を追うに従って両者のからだの感覚は馴染んで「からだであり音でもある」という一つの創作領域を形成してくる。
第二シーン。次の出演者Bと□は、出番を待っている間、前のシーンの成り行きをからだで捉えていて、既に影響を受けています。Bと□のテンション調整は出番直前には既に済んでしまっています。ここで、色々ある訳です。たとえば、前のシーンの出演者へのライバル心から一気に突っ走る人もいますし、様子を看ながら場を再調整しようとする人。
第三シーン。Bと□は続けて出演します。舞台の流れはからだで直接的に捉えていますが、体力も消耗してきます。
前のシーンを舞台の外から捉えていたAと○は自らのテンション調整は充分であり、気迫に満ちているとは謂えども、そう簡単に既に動いてしまっている場に合流できるものではありません。高速道路の路肩を走る車がメイン道路に合流することが難しいのと同じです。
四人の音楽家と踊り手はそれぞれ、これから直接コラボをする相手の位置はメイン道路と路肩に分かれています。舞台上で既に加速した速度を減衰したくはないBは新しく入って来た○を伴走してでもメイン道路に加えようとする。□とAの関係も同じでしょう。
ところが、ここで、メイン道路と路肩という違ったシチュエーションにいた筈の音楽家AとBは無意識裡でアンサンブルを奏で出す。これにつられ踊り手○と□も徐々に速度を合わせ、四人が創り出す音でもなく踊りでもない一つの場のなかで、それぞれの個性を意識とも無意識ともいえない領域で芽生えさせる、かもしれない。
私の即興コラボの方法は、シーンの順番を換えただけで、全く違う作品になります。
出演者の力量、性格上の特質を把握した上でシュミレーション仕切った構成、演出によるものはリスクが少なくなり、より作品性の高いものになります。
構成、演出家の出演者への関わりを少なくしたものでは、ゲーム性が強くなります。
私は参加者がより活き活きと個性を発揮できる場創りがベストだと想っています。
私の企画する即興ライブは、準備もなく初対面で出逢った人達が如何に場を共有し楽しく創造的なコミュニケーションができるのかをテーマにしています。 →即興音楽と舞踏 友惠コラボメソッド 3
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