舞踏・BUTOHの創始者土方巽を唯一継承、舞踏芸術の発展をめざし、実践する舞踏カンパニー「友恵しづねと白桃房」のウェブサイトです。




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“KLANGRAUM” day to day
2019年夏 詩の朗読・舞踏・音楽・映像によるドイツ公演

2019年7月30日〜8月4日の6日間、ドイツのデュッセルドルフにてヴァンデルヴァイザー楽派を主宰するアントワン・ボイガー氏のオーガナイズによる音楽イベント“KLANGRAUM”が開催され、2017年に東京で朗読・雅楽・舞踏によるコラボレーション公演「季譚」を行ったオランダのヨエップ・ドーレン氏と共に同作品の上演で舞踏カンパニー「友惠しづねと白桃房」の加賀谷早苗が舞踏で参加した。
“KLANGRAUM”は、 1994年にスタートし、初年は1つのコンサート、2年目は3つ、3年目は9つのコンサートと発展し、現在に至る。今年は、基本の5日間のプログラムがあり、各日8つの演目(ティートークと題するアーティストへのインタビューのプログラムを含む)で40演目。6日目にクールダウンの日があり、4つの演目(トーキングタイムのプログラムを含む)。合計して44演目が実施された。プログラムは以下の通り。

“KLANGRAUM”のプログラム(画像をクリックすると拡大画像が表示されます)
デュッセルドルフ市とヴァンデルヴァイザー楽派の助成により、ドイツはじめオランダ、アメリカ、イギリス、オーストラリア、コロンビア、アルゼンチン、セルビア、イスラエル、ポーランド、ハンガリーなど、世界の国々から作曲家・音楽家が集まった。副題に“day to day”とある。日々、参加者それぞれがパフォーマンスを行うと共に、参加者は全ての演目を聴く・見る・体感することができるプログラムになっている。

5日間、毎日、各自の演目を上演する。各自の上演以外の時間も恣意的に演目を選んで鑑賞するのではなく、基本的に全てに参加する。先に44演目と紹介した通り、自分自身もこの全てに参加していた事にあらためて驚く。

5日間の毎朝、始まりの演目はエバ・マリア・ホーベンのピアノによる“meditations sur ie piano”。その1音から美しく深い音の世界に惹きこまれていく。心にふれ、涙が溢れでる。深淵な瞑想へと誘われる。5日間でNo.1〜10まで演奏された。

各自の演目は、基本的に、日々上演時間、場所が変わっていく。
午前中(10:30〜12:30)に3つの演目を経て、ランチタイム。16時に、日々「季譚」を上演される。

2019年夏の「季譚」は、ヨーロッパのメンバーと共に取り組むこととなった。ヨエップ・ドーレン(コンセプト・アクター)、アントワン・ボイガー(作曲・フルート)、エルス・ヴァン・リエル(映像)、ジャーマン・シスタマン(クラリネット)、シーマス・カーター(コンサーティーナ)と、加賀谷早苗(舞踏)による。
5日間、日々同じでも変化してもどちらでも良いという事だが、必然的に変化していく。
「季譚」とは、ヨエップが松尾芭蕉の奥の細道「月日は〜」にインスピレーションを受けると共に、日本の4つの季節の移り変わりにある5つ目の季節「土用」に着目し、2017年には春夏秋冬とそれぞれの土用を巡っていった。今回は丁度、夏の土用の時期の上演となり、春土用から夏、夏土用を巡った。構成表をここにご紹介する。
“KLANGRAUM”の構成表(画像をクリックすると拡大画像が表示されます)
作品全体に、52分間のアントワン・ボイガーさんが、雅楽で土用の調子とされている壱越調(D調)を基調に作曲、ミキシングしたサウンドトラックが流れる。

アントワンさん作曲による音楽家の現場での演奏の楽譜をご紹介させて頂く。
アントワンさん作曲による楽譜
(画像をクリックすると拡大画像が表示されます)

「季譚」の後は、17時からシルビア・アレクサンドラによるアーティストへのユニークなインタビューの時間だ。そして、会場に隣接するギリシャ料理のレストラン「Mauts」の美味しいディナーのひと時へ。

夜(19:30〜21:30)に、さらに3つの演目。
こうして、5日間の日々が続く。

5日目は、それぞれの集大成という実りの感があった。




この上演のための準備にあたっての友惠しづねの稽古では「愛情を持ちなさい」とのかけがえのない指導があった。「‘今’という‘時’があるならばそれは‘慈愛’であると思う」との友惠しづねの言(アート・ミュージックDVD「眠りへの風景」のドキュメンタリー参照)があるが、 参加者が5回見てくださる上演のなかで、日を重ねるごとに、そのことを身にしみて感じる日々となった。

6日目の最終演目をヨエップ氏の朗読と、音楽、舞踏の共演で上演させて頂いた。
Zeami 朗読: ヨエップ・ドーレン、作曲・演奏(フルート): アントワン・ボイガー、舞踏: 加賀谷早苗
The Hill: 朗読:ヨエップ・ドーレン、舞踏:加賀谷早苗、作曲:ジャーマン・シスタマン、演奏:ジャーマン・シスタマン(クラリネット)、マックス・ボバー(バイオリン) 、ムンタグ・ロリンク(バイオリン)、映写による照明: エルス・ヴァン・リエル

参加者の方々の感涙、感激の声、さらには、アントワンさんの飼い犬シーバス君が舞台に駆け込み喜びの吠え声をあげてくれるというサプライズも!


演劇・舞踊フェスティバルなどに参加する時には自分の演目を必死に上演し、殆どの演目は同時にさまざまな会場で行われているため、他の参加者の演目を観る事も出来ないまま、場所を跡にする。KLANGRAUMの取り組みはアーティスト自身を互いにアクティベートする強力な磁場になっていた。

2019年8月6日 加賀谷早苗
ショートインタビュー
2019年8月3日 klangraumにおけるkitan上演アーティストとの談話
聞き手:加賀谷早苗

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